― VOCALOID Editor for Cubaseとぼかりすの連携で、ボーカロイドは音色だけでなく人間の歌い方までをも集合知として共有する事と成るのか。―
1.歌唱アーティキレーションの共有
1月18日の発売を目前に控えるVOCALOID Editor for Cubase(以下ボカキュー)。
情報が揃って来ましたね。
ICONさんによるレポートで以下の動画を見る事が出来ます。
※引用元記事
「1月18日、遂に発売される「VOCALOID Editor for Cubase」、かごめPさんによるデモンストレーション・ムービー」
動画を見るとボカキューは歌詞の打ち込み以外Cubase7標準のエディタ機能をほぼ全て使えるそうです。素晴らしいですね!
これが何を意味するのか。
それは、ビブラートやしゃくり上げ/下げなどに使われるピッチとダイナミクスといった歌声の表情を司っている『複合的パラメータの時間的変化=アーティキレーション』をライブラリ化・共有出来るという事なのではないかと。
※以下の記事は推測を含みます。ご了承下さい。
具体的な操作はこうです。(ボカキュー発売前の為、画面はサンプルです)
ボカキューのトラックを複数レーンにし、ビブラート、ダイナミクスなどをレーンに配置するだけ。
独立しているのでパラメーターだけコピー・移動自由自在です。
また、プロジェクトをまたいだ共有についてはビブラートなどの部分のみロケート範囲ツールで.midに書き出し後、任意フォルダにまとめます。
そのフォルダをMediaBayの追加ボタンで登録してしまいましょう。
c.c.データのみを別トラックに出して使いまわししようという、その昔ホビーユーザーがMIDIだけで楽しんでいた頃、いわゆる『宅録・打ち込み時代』で当然のようにやっていた事なんですけどね。
これによりYAMAHA公式でアナウンスされている作業の簡便化という次元に留まらず、ボカロトラックの”作りこみ”フローに大改革が起きるのではないでしょうか。
2.ぼかりす連携による大きな可能性
ボカキュー発売後暫くはJob Pluginに対応していないそうですが、『ぼかりす(VOCALOID3 Job Plugin VocaListener)』により可能性は更に広がります。
ボカロ楽曲制作者本人が必ずしも歌が得意という訳では無いですよね。
そこで『ぼかりすを歌唱アーティキレーションの収集ツール』と割り切れば良いのかなと。
たとえば懇意にしている歌い手さんに頼んで様々な歌唱アーティキレーションを提供して頂くというのも一つ。
更には歌い手さん自身がぼかりすにより抽出した歌唱アーティキレーションを頒布するなんていう事もありなのではないかと。
その昔MIDIデータの販売というのもありましたが(今も?)、それの歌唱アーティキレーション版を企業が販売するというのも面白そうです。
3.余談! オフィシャルで何故この話題が無いのか。
歌手個人の”うたいまわし”や”クセ”を数値化・可視化し共有するというのは権利的にデリケートという事だからかもしれません。
たとえばシングルCD等には時々オフボーカルバージョンという物が入っていますよね。
このオフボーカル版を逆位相にしてボーカル有り版にぶつけるとボーカルだけ簡単に抽出出来たりするのはご承知の通り。
これをぼかりすで解析・抽出した場合、出力されたアーティキレーションデータの権利はどうなるのかという事です。恐い恐い…。
著作権法の整備が追いついていない境地へ歩みだしたという感じでしょうか。
何はともあれ期待の大きいボカキュー、届くのが楽しみです。