うちに来たMinimoog Model Dの製造年月日などの素性を知る為、Minimoogについて改めて調べてみました。
前回ブログ記事の続きです。
前→「音声有:ミクの日に夢が叶った! Minimoog Model D到着」
まずは基本のおさらいからです。
1.Minimoog Model Dの「Model D」とは
プロトタイプがA、B、Cあり、製品化されたのがModel Dだそうです。
Model DといえばオリジナルMinimoogを指し、表記がMinimoogのみだったら2002年に復活したMinimoog Voyagerかもしれません。
このModel Dには大きく前期型と後期型の2種類あります。
2.前期・後期型の違いとは
Minimoog Model Dには前期型、後期型があり、シリアルナンバー#10175を境に基盤が変更されています。この変更前の物が前期型、交換後を後期型と呼んでいます。
確認する方法として確実なのはオシレーターボードの調整可能なトリマー数だそうで、リアパネルにあるトリム穴が前期型は11個、後期型は16個となっています。
写真:うちの子は11個なので前期型ですね。Model Dの生産は1970年11月19日に出荷されたシリアル#1001から始まり、生産完了の1981年まで合計12,250台が生産されたそうです。
写真:シリアルと製造工場が刻印されています。シリアルが#1449ですので、かなり初期の前期型であることが分かります。
下段、Williamsvilleという表記は製造時の会社(工場)所在地を示しています。
1970年に製造されたModel DがTrumansburgで、
1971年~1975年がWilliamsville、
1975年~1981年がCheektowagaになるそうです。
正確な製造年が知りたいので開けてみました。製造日が書き込んであるそうですが…どこかな?
あった!
1972年4月6日(木)P.C.ボードの組み立て開始、
1972年4月18日(火)最終組み立てと機械検査(計測?)
1972年4月21日(金)電気的検査、サウンド検査、最終検査された個体という事が分かりました。
このMinimoog Model Dの誕生日は1972年(昭和47年)4月21日(金)だったんですね。
今年で42歳ですか…
ちなみに!
その頃国内では、
1972年4月10日 – 埼玉県入間郡富士見村から富士見市市制施行。
1972年4月16日 – 川端康成が逗子市でガス自殺。
http://www5a.biglobe.ne.jp/accent/kazeno/calendar/dekigoto/1972.htm
アメリカでは、
1972年4月21日 – 午前2時23分(UTC)に、アポロ16号の月着陸船がデカルト高原地域の南緯8度98分、東経15度49分に着陸し、午後4時47分から11時56分まで観測ステーションの設置と周辺のクレーターの探索が行われていたそうです。
http://www.ku-ma.or.jp/tpsj/know_apollo16.html
と、どうでもよい情報。
話を前期・後期型の違いに戻して…
では音質についてはどうでしょうか。
私は比べられる程多くのModel Dを触った経験が無いので分かりませんが、
Five GさんのFAQページによると、「前期型は後期型よりも歪んでいて存在感のあるサウンド」が特徴。
「後期型は歪感が若干減るもののチューニングが安定したオシレーター基盤をそなえている」とのこと。
といっても「どちらもMinimoogサウンドで大きな違いはありません」となっています。
3.キース・エマーソンのMinimoogは?
調べました。
MOOG ARCHIVESで下記の出荷記録を発見。
>> Keith Emerson
>> 1971年10月27日出荷 Minimoog Model D #1203
エマーソンのMinimoogはシリアル1203番。当然前期型です。
うちのMinimoogから数えて246台前。この歴史的繋がりがオリジナルならでは。
エマーソンによるMinimoogプレイで有名なのが”Karn Evil 9″のベースラインでしょうか。
さらにエマーソンのトレードマークたるMoog Modular Systemsの出荷記録も残っていました。
>> Keith Emerson
>> 1970年7月10日出荷 Model I-CA Modular Systems
>> with Preset Box
IIICでは? と思う方もいるでしょうが、最初はIのカスタムモデルに特注のプリセットボックスを付けた物だったようです。
確かに1971年の「展覧会の絵」ライブ映像を見るとキャビネットがまだ1段です。
キャビネット上、左側に乗ってるのがプリセットボックスです。
4.現行MOOGシンセ達との違い
我が家のMinimoog Voyager、Sub PhattyとModel Dを比べてみましたが、結構違うもんですね。
Voyagerなら音色はそこそこModel Dと同じ感じが得られます。
しかし音質は全く違います。別物です。
歪感についてはModel Dの歪特性に似せたSub PhattyのMultidrive機能を使えば近いのかもと思いましたが、こちらもかなり違います。
Voyager、Sub Phattyどちらも良いですけど、Model Dの音楽的に暑苦しい音ヌケ、サチュレーション具合は唯一無二だと思い知らされました。
といっても、Model Dは作れる音の幅が上にあげた3種類の中で最も狭いです。
しかしその狭い範囲に伝説のプログレバンドによる名盤・名演の「あの音」が含まれているという事なんですね。
よく言われる事ですが、
Minimoog Model Dの音が欲しかったらModel Dを手に入れるしかない。
納得しました。
写真:左Sub Phatty 右Minimoog Model D全然Miniじゃないです。当時のモジュラーシンセに比べてMiniって事なんですね。
参考サイト
Five G music techonology FAQ (日本語)
http://home.att.ne.jp/yellow/fiveg/faq/faq.html#Anchor-Minimoo-49819
MOOG ARCHIVES (英語)
http://moogarchives.com/
wiki Minimoog (英語)
http://en.wikipedia.org/wiki/Minimoog