夏生様よりコメントでご指摘頂きまして、謎がだいぶ解き明かされたかなと。
メールでも色々ご教授頂きましたので、その内容を踏まえつつ、何とか自分でも分かる内容に咀嚼しつつ追記させて頂きます。(2014年3月13日22時)
【簡単に言うと】
Five G Modでオシレーターのチューニングに関わる抵抗器をチップに密着させるのは、「感温抵抗器」と「チップ(アンチログ回路)」の温度変化をシンクさせ、チューニング機能を適切に働かせるため。
ですので、チップを”暖めている”という訳では無かったのです。
これが答えのようです。
もうちょっと詳しく書いてみます。
感温抵抗器をアンチログの実体であるLM3046トランジスタアレイに密着させることでチューニング安定化を図っている。
これは感温抵抗を適正化し、感温抵抗器による温度補償を行うもの。
◆パーツの定義
1.LM3046=アンチログ回路を構成する実態であるトランジスタアレイ
(Oscillator Board左にあるチップ)
2.感温抵抗器=5G-Modで移動された黒い抵抗器
で、
◆Minimoog Model D原器の問題点
チューニングが狂いやすい。
感温抵抗器がアンチログ回路の実体たるLM3046トランジスタアレイと物理的に離れている為、アンチログ(指数)変換による期待値=温度補償が甘くなっている。
◆感温抵抗器に(シンセ部品として)求められる機能
チューニングを保つこと。
指数変換回路(入力電圧を指数変換して出力する回路)は温度補償を行わないと温度変化により、音程がずれたり、1オクターブの間隔が変化したりする。
その変化を抑制するため、感温抵抗器で「温度が上昇しても電圧は抑圧される方向に向いて、結果、元の電圧を保持する」これが電圧(CV)の保持=チューニングを保つこと。
◆何故LM3046と感温抵抗器が離れていると温度補償が甘くなるのか
LM3046と感温抵抗器は基盤のパターン配線で繋がっているが、距離が離れているため感温抵抗器のセンサーとしての機能が十分に働いていない。
※感温抵抗器とは、抵抗器がもつ温度変化によって抵抗値が変わる特性を利用した抵抗器。
通常、抵抗器としてよりもセンサーとして、または半導体素子の温度ドリフトをキャンセルする温度補償回路などに用いられている。
これで、Five G Modが何をしているのか分かってきました。
◆問題の解決方法
LM3046の動作時の温度変化を感温抵抗器に反映させる。
チューニングの安定性を阻害する要因は気温や室温ではなく、アンチログ(指数)変換部のLM3046トランジスタが司る機能の動きにある。
『温度が上昇すると流れる電流が増える』という部分を感温抵抗器で適切に受け、確実に温度補償を行う必要がある。
これを実行するための策の一つが、Five Gさんが行ったような『感温抵抗器をアンチログの実体であるLM3046トランジスタアレイ(集合トランジスタ)に密着させることで、感温抵抗器の働きを正常化する』という方法。
このFive G ModのようにMoogの場合は常温で感温抵抗器を適切に機能させているわけですが、他のアナログシンセではヒーターを内臓させたトランジスタ(恒温補償されたペアトランジスタ)で暖めている例も多いようです。
この方法がとられているシンセはRoland SH5/7/1/2/system 100/100M/700とのこと。
また、このヒーター内臓ペアトランジスタを含めて1チップIC化されているのが、SSM(solid state technorogy for music)のSSM2033とSSM2038だそうです。
このSSMチップはProphetやSH-101で使用されました。
以上です。
うん、なんとなく分かった気がします!!
夏生様、ご教授頂き有難うございました!
ここから下は修正前の記事です。※打ち消し線のみ追加
Minimoog Model Dのオシレータ安定化改造について一部分かったかも?我が家にやって来たMinimoog Model D #1449 前期型はFive Gさんによるチューニング安定化改造済みの個体です。いわゆる5G-Modという改造ですね。
内容は下記の通り。
- 1)チューニングの安定度の向上 温度変化に強い改造を実施
- 2)耐久性の向上 PSN処理による接点保護、15年以上の修理実績で得たノウハウによる故障の予防
3)回路設計時のバグを排除 デジタル回路の動作を安定化、フリーズとメモリ飛びの予防- 4)演奏性への配慮 キーボードやベンダーホイールなどの扱いやすさをチェックしてメンテナンス
FiveGで販売する商品はどれも同じ基準でメンテナンスしていますが、現在MINIMOOG、MEMORYMOOG、PPG WAVE、LINN LM-2、OXFORD OSCARに使用しています。音源の部品はオリジナルと同じ型番を使用していますので、出音の特徴はオリジナルとまったく変わりません。
(Five G FAQより抜粋)
以上の改修が行われています。
ではまず、5G-Modされていない素のMinimoog #9725 前期型 Oscillator Boardをご覧下さい。※元画像
http://s275.photobucket.com/user/JohnLRice/media/MiniOscBoardRight.jpg.html
次に5G-Modされた私のMinimoog #1449 前期型 Oscillator Boardが下記。
一目瞭然。
精度の悪そうなトリマーが新しい青色のトリマーに変更されています。
2列のトリマー間にあるチップもソケットが設けられ、交換を容易にしているようです。
そして興味深いのが灰色の空中配線された部分。
追加されたこの配線をよく見ると、元々基盤にあった3つの黒い抵抗器が外され、向かって左側のチップの上に配置換されています。この元々の黒い抵抗がピッチの安定性に関わるパーツかもしれません。
それを別チップの上部に張り付ける事で温めているのではと。
以前こんな事を呟きました…
ひょっとして、minimoog Model-Dのチューニング安定化って、電源部分からヒートパイプ引っ張ってVCO暖めるとかだったり。確かCS80をそうやって安定化させてたキーボーティストが海外にいたなぁ。まさかね。
— いーえるP (@ELPTinySymphony) 2014, 2月 25
これ、電源から引っ張ってるかどうかまでは確認しませんでしたが、
大体正解だったんじゃないかと。
(いや、それ違うよ! 等、情報があればお教え下さいませませ)
出典はMrak Vail著 「VINTAGE SYNTHESIZERS」の日本語版です。
これにVCOを温めて安定させたエピソードが書いてありました。CS80じゃなくてGX1だったかも?
私のMinimoog Model Dが前期型にもかかわらず5分でピッチが安定する理由は、素体自体が当たりの個体だったという事に加え、トリマーの変更と接点保護、そしてチップの暖房がその理由かもしれません。
5G-Modは素晴らしい!
また、鍵盤や接点の調子の良さは、YS Corporationさんが出荷前にキーガイドゴム44個全部交換、接点クリーニング等の調整を丁寧にして頂いたからでした。
良い個体を入手出来たもんです。
本当にラッキーとしか言いようがありません。
別にFive Gさんの回し者というわけではありませんが、5G-ModされていないModel Dは当たり外れが怖いかもしれませんね。
私のように中身に詳しく無い人間が、オークションなどで素性の分からないビンテージシンセを買うというのは危険極まりない事だと知った次第です。
【参考サイト】
Five G music techonology
http://www.fiveg.net/
YS Corporation
http://www.ys-co.org/index-j.html
mini moog の温度補償は、常温での感温抵抗を使ったものです。
素子を温めたりする恒温補償ではありません。
アンチログ回路は、3300ppmという温度特性を持っていて、これを補償するために+3300ppmの感温抵抗を使用しています。
原器では、これをアンチログ回路を構成するLM3046とは離れた場所に実装していたので、温度補償は甘くなっています。
これをアンチログ回路を構成するLM3046に密着させることにより、LM3046の動作時の温度変化を感温抵抗に反映させようというものです。
チップ自体は常温のままで、温められていることはありません。
アンチログ素子を温める恒温補償は、ローランドのSH-5などからsystem 700に至るまで採用されています。
また周辺回路も取り込んだSSMの半導体のうちSSM2033やSSM2038などprophetシリーズの一部やEmuタンスに使われたものは、半導体をヒータとして扱い同じペレット上の半導体を感温部にし、半導体を温めることで温度補償を行いました。
ですので、残念ながらmini moogやmoog modular、ARP #2800(オデッセイ)は温められる恒温補償ではありません。
夏生様
貴重な情報を頂き誠に有難うございます。
そしてメールにてご教授も頂いてしまい、恐縮でございます。
早急に記事の修正・追記を行いたいと思います!